愚妻とは?意味・読み方・使い方
更新:2026-10-28

愚妻(ぐさい)とは、自分の妻をへりくだって言う謙称です。辞書では「自分の妻を謙遜して言う語」とされています。手紙や改まった会話で使われてきましたが、今は古い言い方と感じる人もいるため、「妻」「家内」などに言い換える人が増えています。聞く人の受け止め方も分かれます。
愚妻の意味
愚妻は、夫が他人に対して自分の妻を言うときの謙称です。辞書では、「自分の妻を謙遜して言う語」とされ、「おろかな妻」という意味も挙げられています。類語として「荊妻(けいさい)」「山妻(さんさい)」が並びます。
江戸時代の浮世草子にも、「愚妻の口上不都合なる事これあるべし」といった使用例があります。つまり、かなり昔から、へりくだる言い方として使われてきた言葉です。
あなたから見た道筋は「自分→自分の妻」です。使うのは夫の側で、自分の妻を他人に言うときに使います。相手の妻は「ご令室」「奥様」と敬い、自分の妻は「愚妻」と下げる、という対の使い分けが背景にあります。
ただし、「おろかな妻」という意味を持つため、パートナーを下げる言い方として違和感を持つ人もいます。夫婦が対等だと考える現代では、あえて使わない人も多く、言葉の背景を知ったうえで選ぶとよいでしょう。
漢字の書き分けと読み方
- 愚妻:ぐさい。自分の妻をへりくだる語。
- 荊妻:けいさい。愚妻の類語で、さらに古い言い方。
- 山妻:さんさい。やはり自分の妻をへりくだる、古い言い方。
- 家内:かない。自分の妻を指す、一般的な言い方。
- 妻:つま。もっとも中立的な言い方。
愚妻の「愚」は、おろかなという意味で、自分の家族をへりくだる字です。愚息(息子)、愚父・愚母、愚弟・愚妹と同じ仲間です。「妻」は配偶者の女性です。読みは「ぐさい」で、「ぐつま」とは読みません。
「荊妻(けいさい)」は、いばらの簪をつけた貧しい妻、という中国の故事にちなむとされる古い謙称です。今はほとんど使われず、手紙の文面で見かける程度です。
「愚妻」は、書き言葉でも会話でも使われますが、ふだんの会話では「家内」「妻」「うちの奥さん」など、別の言い方が増えています。
会話・手紙での呼び方
| 場面 | 愚妻を使った例 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 取引先へのあいさつ | 「愚妻がお世話になっております」 | 「妻がお世話になっております」 |
| 手紙 | 「愚妻ともども、お礼申し上げます」 | 「妻ともども、お礼申し上げます」 |
| お礼状 | 「愚妻にまでお心遣いをいただき」 | 「家内にまで、」 |
| 会話(目上の人に) | 「愚妻もよろしくと申しておりました」 | 「妻もよろしくと申しておりました」 |
| 結婚式のあいさつ | 「愚妻と二人で、ここまで参りました」 | 「妻と二人で、」 |
夫婦そろって手紙を出す場合は、「私どもは」「妻と私は」と書き、わざわざ「愚妻」と書かなくても、丁寧な文になります。
夫が自分の妻を「愚妻」と話すのを、妻本人が聞いている場合は、気持ちよく思わないこともあります。冗談として許される関係でも、改まった場では避けるほうが安心です。
よくある間違い
- 他人の妻に「愚妻」を使う間違い。愚妻は自分の妻をへりくだる言葉で、相手の妻は「ご令室」「奥様」です。
- 妻の側が、自分の夫を「愚妻」と言う間違い。愚妻は妻のことです。自分の夫を人に言うときは、「夫」「主人」が一般的です。
- 愚妻を「ぐつま」と読む間違い。正しくは「ぐさい」です。
- 愚妻を、妻をけなす意味で使う間違い。へりくだる言葉ですが、妻を悪く言う意図で使うと、聞く人に不快感を与えます。
- 愚妻を、妻に直接呼びかける言葉と思う間違い。愚妻は他人に自分の妻を説明するときの言葉で、本人への呼びかけには使いません。
自分の妻の呼び方を比べる
| 言い方 | 印象 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 愚妻 | 古風でへりくだる | 格式の高い手紙、年配の方との会話 |
| 家内 | やや古風だが一般的 | 取引先との会話、手紙 |
| 妻 | 中立的で丁寧 | ほとんどの場面 |
| うちの奥さん | やわらかい | 親しい相手との会話 |
| かみさん・嫁 | くだけた言い方 | 友人・同僚との会話 |
| パートナー | 性別を問わない中立的な言い方 | 現代的な場面 |
どの言い方が正しいかは、場面と相手によって変わります。迷ったときは、「妻」を選べば、ほとんどの場面で失礼になりません。
今の受け止め方:伝統と配慮のあいだで
愚妻については、次のような見方があります。
- 伝統として使う:へりくだる日本語の型で、相手を立てる気持ちを示す言葉として使う
- 使わない:パートナーをおろかと言うのは対等でないと感じ、「妻」と言う
- 場面で選ぶ:目上の人への改まった手紙では使い、ふだんは使わない
どの考え方も、それぞれの理由があります。妻本人や周りの人がどう感じるかを考えながら、言葉を選ぶのがよいでしょう。夫婦の間で、「どう呼ばれたいか」を話し合っておくのも一つの方法です。
年賀状・手紙での扱い
夫婦の連名で出す年賀状や手紙では、愚妻と書く必要はありません。「私ども夫婦は」「家族そろって」のように書けば、それだけで丁寧です。
- 夫のみの差出人で、妻の近況を伝える:「家内も元気にしております」
- 相手の妻の安否を尋ねる:「奥様にもよろしくお伝えください」
- 夫婦で参加した行事の礼:「妻と二人、楽しく過ごしました」
- 改まった謝辞の手紙:「愚妻ともども、深く感謝申し上げます」
夫婦のどちらか一方を、もう一方よりも下げる書き方は、読む人によっては気になる場合があります。相手が女性の場合や、若い世代へ送る場合は、とくに配慮するとよいでしょう。
家族の紹介と謙称の関係
日本語では、自分の家族を他人に紹介するとき、身内には敬語を使わないのが基本です。たとえば、取引先に自分の妻のことを話すときは、「妻が申しておりました」と、敬語を使わずに言います。これは、身内を相手に対して低く扱うという考え方があるためです。
愚妻は、この考え方をさらに強めて、自分の妻を一段へりくだって言う言葉です。ただ、敬語を使わない「妻」「家内」だけで、身内を相手の下に置く、という目的は果たせています。愚妻のように強い言葉を使わなくても、丁寧さは十分に保てます。
相手の家族・自分の家族の使い分け表
| 相手の家族を言うとき(敬称) | 自分の家族を言うとき | |
|---|---|---|
| 妻 | ご令室様・奥様 | 妻・家内・愚妻 |
| 夫 | ご主人様・旦那様 | 夫・主人 |
| 息子 | ご子息様 | 息子・愚息 |
| 娘 | ご息女様 | 娘 |
| 父 | ご尊父様 | 父・愚父 |
| 母 | ご母堂様 | 母・愚母 |
長めの例文
お礼の例:「先日は愚妻にまでお心のこもったお品をいただき、ありがとうございました。愚妻も大変喜んでおりました」
言い換え例:「先日は妻にまでお心のこもったお品をいただき、ありがとうございました。妻も大変喜んでおりました」
どちらも感謝は同じように伝わります。相手との関係や場面に合わせて選んでください。迷うときは、使わないほうを選んでも失礼にはなりません。
よくある質問
- Q. 愚妻の読み方は?
- 「ぐさい」です。
- Q. 愚妻の意味は?
- 自分の妻を謙遜して言う語です。辞書には、「おろかな妻」という意味も載っています。
- Q. 愚妻は失礼な言葉ですか?
- 言葉自体は、自分の側を下げる謙称であり、相手への失礼にはあたりません。ただし、妻を下げる言い方に抵抗を持つ人もいるため、場面によっては「妻」「家内」と言うほうが無難です。
- Q. 愚妻を女性は使えますか?
- 愚妻は夫が自分の妻を言うときの言葉です。女性が自分を指して使う言葉ではなく、自分の夫を言うときは「夫」「主人」を使います。
- Q. 愚妻を言われたら、どう受け答えをすればいいですか?
- 相手が自分の妻を愚妻と言ったら、「奥様はいつもお元気で何よりですね」のように、奥様を立てる返事をするのが礼儀とされています。形式ばらなくても、笑顔で受け止めるだけで十分です。
- Q. 愚妻の代わりに、どんな言葉を使えばいいですか?
- 「妻」が中立的で、ほとんどの場面で使えます。やや古風でよければ「家内」、親しい相手には「うちの奥さん」もあります。性別を問わない場面では、「パートナー」も増えています。
- Q. 愚妻と家内の違いは?
- 愚妻はへりくだる気持ちを強く出した謙称で、家内は自分の妻を指すふつうの言い方です。家内のほうが日常で使いやすく、愚妻は改まった文章向きです。
関連する呼び方
出典・参考
相続・扶養・戸籍など個別の手続きや判断は、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家にご相談ください。